腎臓教室 Vol.6

巻頭特集:腎臓病と冬の暮らし

年末年始の忙しさにまぎれて、せっかく身についた食事や生活習慣を怠っていませんか?体力低下によるカゼ引きも心配。腎臓病患者さんが、この時期とくに注意したい点をいくつかあげてみました。

外食は塩分に注意

外食やお酒を飲む機会もぐんと増えるこの季節、腎臓が悪いとはいえ、通常の社会生活を営んでいれば、お付き合いをすべて断るといわけにはいかないでしょう。ふだんきちんと食事制限を守っていて体調もよければ、月に1~2度くらい多少食べ過ぎても心配ありません。むしろ、毎日少しずつオーバーしているほうが問題です。

ただし、外食の際にはメニュー選びは慎重に。外食は一般に食塩の含有量が多いものです。「今夜は宴会」という日は、朝昼の食事で一切食塩を使わないくらいの心構えも必要です。外食時のポイントをいくつかあげてみましょう。

  1. 材料がわからないものは避ける。
  2. 調味料を別の器に入れるなど、自分で味を加減できるものを注文する。
  3. 肉や魚は1~2口ずつにし、その分野菜を多くとる。

食べ過ぎを防ぐため、出かける前に特殊食品などを食べて、少しおなかをふくらませておくのも、いい方法です。

また、何でも相談できる行きつけの店をもつのもおすすめ。プロの料理人と親しくなれば、あなたの好みや体調に合わせ、塩分を控える調理法や素材の組み合わせのバリエーションなども、 気軽におしえてくれることでしょう。

お酒は飲み過ぎると腎機能を悪化させる原因になります。個人差もありますが、適量を心がけること。また、アルコールには、たんぱく質を含むものもあるので注意しましょう。

カゼは腎臓病悪化のもと

この時期、いちばん心配なのがカゼです。生活が不規則になると体力も低下し、カゼを引きやすくなります。実は保存期の患者さんで、年末年始、あるいは冬の間にカゼをこじらせ、腎臓病の悪化を招いて、透析導入を早めてしまうケースも少なくないのです。

カゼのウィルスは湿気を嫌います。室内の乾燥を防ぎ、夜はなるべく早めに休むようにしましょう。市販の感冒薬は、かえって腎臓を傷めてしまう場合があります。カゼ気味かなと思ったら、すぐに主治医に相談してください。

腎不全の人がカゼを悪化させやすい理由の一つに、エネルギー不足があげられます。卵、肉、魚などの良質のたんぱく質をとり、エネルギー補給を心がけてください。ビタミンCを多く含む野菜類は、カゼ予防に欠かせません。ダラダラしがちな年末年始こそ生活にハリをもたせて、寒い季節をパワフルに乗り切りましょう。

アルコール名 1回当たりの
使用量(g)
目安 1回使用量当たりの 備考
水分
(ml)
カリウム
(mg)
カルシウム
(mg)
リン
(mg)
エネルギー
(kcal)
食塩
(g)
たんぱく質
(g)
梅酒 30 大さじ2杯 20 10 0 0 40   0.1未満
ウイスキー 30 シングル1杯 20 0 0 0 70    
酒かす(清酒) 20 かす汁1人分 10 10 0.1未満 0.1未満 40   3.0
しょうちゅう(25度) 90 コップ1/2杯 70 0 0 0 130   0
ジン(47度) 30 シングル1杯 20 0 0 0 80   0
清酒(1級) 180 コップ1杯 150 10 10 10 200   0.9
ビール 350 レギュラー(中)
1缶
320 120 10 50 140   1.4
ブランデー(1級) 30 ブランデーグラス1杯 20 0 0 0 70   0
ワイン(白) 60 ワイングラス1杯 50 50 10 0.1未満 50   0.1
ワイン(赤) 60 ワイングラス1杯 50 60 0.1未満 10 40   0.1

註)この表は「四訂日本食品標準成分表」に準拠したものです。備考欄の「食塩」は数値が発表されていないため空欄となっています。

一覧に戻る