腎臓教室 Vol.59
血液検査の主な検査値
監修:大平 整爾 先生 札幌北クリニック 院長慢性腎臓病と診断を受けたら、病気の進行に応じて食事療法を始めるとともに、定期的に病院を受診し薬を飲み、血液検査と尿検査を行います。尿検査については「そらまめ通信」VOL.50(2010年4月発行)に詳しく記載しています。こうした検査は病気の進行や合併症、栄養状態、治療の効果等を確認するためにとても大切です。自覚症状がないからと通院をやめず、医師の指示通り定期的に受診しましょう。今回は腎臓に関する血液検査について、もっとも一般的な検査値をご紹介します。
血清クレアチニン(Cr)
クレアチニンは筋肉の代謝産物で、健康であれば尿から排出されますが、腎臓の機能が低下すると尿の中に排泄される量が減り、結果として血液中に溜まります。腎機能を知る上でとても重要な検査値です。しかし個人の筋肉量によって左右され、腎機能が同じであっても女性や高齢者のほうが値が低く出る傾向があります。症状などによって異なりますが、血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上になると透析導入が検討されます。eGFR(推算糸球体ろ過量)
クレアチニン値が筋肉の影響を受けることから、クレアチニン値と年齢、性別という3つの要素をかけあわせたeGFR(推算糸球体ろ過量)が幅広く用いられるようになりました。「ml/分」という単位ですが、おおよそ腎機能のパーセンテージに対応しており、GFRが75 ml/分であれば腎機能が健康時の75%程度と考えることができます。GFRの値によってCKD(慢性腎臓病)の病期がステージ1~5までに分類されています(*)。血清尿素窒素(BUN)
尿素窒素は血液中の尿素に含まれる成分で、蛋白質が利用された後にできる老廃物です。腎機能が低下すると血液中に溜まるため、血液中の尿素窒素の値が高くなります。尿素窒素は蛋白質の摂り過ぎ、消化管からの出血、脱水、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍等でも数値が上昇します。血清総蛋白質(TP)
総蛋白は体の細胞を作る重要な材料です。腎機能が低下して尿に蛋白が多量にもれると血液の蛋白濃度が低くなります。栄養不足や肝硬変では正常値より低くなり、多発性骨髄腫や脱水症では高くなります。血清アルブミン(Alb)
血液中に含まれる蛋白質の一種です。腎機能が低下すると尿にアルブミンがもれ、血液中の濃度が低くなります。栄養不足、感染症、体内の水分過剰などにより低アルブミン血症が明らかになります。血清カリウム(K)
腎臓が十分に機能していないと体内に溜まります。カリウムの濃度が高くなると心拍数、筋肉、神経が影響を受けます。血液透析の場合は、カリウムを多く含む食事(野菜・果物など)を制限されることがあります。血清カルシウム(Ca)
カルシウムは骨を構成し、細胞増殖やホルモン分泌を指示する働きがあります。低カルシウム血症になると筋肉が緊張したり骨折しやすくなります。腎機能が低下すると食事からのカルシウムの吸収が抑えられ、低カルシウム血症になりやすくなります。血清リン(P)
リンは骨の代謝に深く関わっています。腎機能が低下すると体内に蓄積し、カルシウムの吸収が抑えられ、骨がもろくなります。血中リンの高値は副甲状腺ホルモンの分泌を高めます。ヘモグロビン(Hb)
赤血球に含まれる物質で、酸素を全身に運ぶ役割を担っています。貧血の指標となります。ヘマトクリット(Hct)
血液中での赤血球の占める割合です。値が低い場合は貧血、息切れ、倦怠感、手足の冷感などの症状がみられます。
検査値は難しくて……と敬遠される方もおられますが、このように検査値からは様々なことがわかります。また腎臓病の経過を見るためには病院で行う検査のほか、自宅でも測ることができる体重や血圧の管理も大切です。体重や血圧も含め、ご自分の目標値を主治医と確認して体調管理に役立てましょう。なお、“尿検査”について書かれた「そらまめ通信」VOL.50をご希望の方は、事務局までお問い合わせください。