腎臓教室 Vol.45
自分で自分をほめながら行う自己管理の勧め
CKD(慢性腎臓病)、保存期、透析患者に役立つEASE(イーズ)プログラムとは?
岡 美智代(おか・みちよ)先生群馬大学医学部保健学科
食事療法の際の塩分・水分管理に、岡 美智代先生が提唱されている心理学を応用したEASEプログラムの中の「ステップ・バイ・ステップ法」は、おおいに参考になると思います。岡先生にEASEプログラムとはどういうものか解説していただきました。
はじめに
慢性腎臓病の人や透析をしている人は、安定透析をするためには、体重管理や食事管理など自分で自分をコントロールする「セルフマネジメント」が必要です。しかし、水分や塩分を控えなければならないと頭ではわかっていても、簡単に実行できるとは限りません。わたしは6年以上透析室で看護師として働いていたのですが、水分管理がうまくできずに体重が増え透析中に血圧が下がって、とてもつらそうにしている患者さんを何人も見てきました。そのたびにわたしも心が痛み、何とか支援ができないものかと看護学や心理学の知識を元に研究をしてきました。
ここでは、その成果である自分で自分をほめながら行うセルフマネジメントの具体的な方法、「EASE(イーズ)プログラム」をご紹介します。
EASE プログラムとは
EASEプログラムとは、「Encourage Autonomous Self-Enrichment Program」の略で、日本語では「自主的な自己涵養促進プログラム」であり、患者さんが自分を豊かにすることを促進するプログラムのことです。とくに食事・水分管理などのセルフマネジメント行動を変容させていく実践的なプログラムとして活用されています。EASE プログラムの効果はどのくらいでしょうか。1998年から2008年5月までで、EASEプログラムを使って看護師が患者さんのセルフマネジメント支援を行い、学会などで発表された件数は53件あり、そのうち47件(88.6%)に行動や検査データなどの向上が認められています。他の支援プログラムの成功率は40%くらいのものも多いため、EASEプログラムは効果があるといえるでしょう。
EASE プログラムの技法
EASEプログラムでは、行動を変えるための技法を使います。その技法には「ステップ・バイ・ステップ法」「セルフ・モニタリング法」「ピア・ラーニング法」「行動強化法」「生きがい連結法」があります。ステップ・バイ・ステップ法は、一度に高い目標を掲げるのではなく、実行できそうな目標を少しずつ達成していく方法です。
今まで1日3回お漬け物を食べていた人の塩分管理を例に説明しましょう。この人がステップ・バイ・ステップ法を使う場合、まずは目標と期間を決めます。第1段階の目標例「2 週間で、1 日3 回を2 回にする」、第2 段階の目標例「次の2 週間で、1 日2 回を1 回にする」、第3段階の目標例「さらにその次の2週間で、1日1回をゼロにする」となります。
このように、段階を追ってステップ・バイ・ステップで決めるのですが、成功のポイントはあくまでも無理をせず、できそうな目標をたてて「できるぞ!」という気持ちを高めることです。
自分で自分をほめて自信を持つ
EASE プログラムで大切にしていることは、「できる!」という自信を持つことです。これを心理学の言葉で「自己効力(じここうりょく)」といいます。人は自己効力が高まると行動を起こしやすいということが証明されています。EASE プログラムは、この「できる!」という自己効力を高めることを助けるプログラムです。たとえば、前述の塩分管理のステップ・バイ・ステップ法は、実行できそうな目標を段階的に立案し、「できる!」「できた!」という気持ちを高め、自分をほめるのに役立つのです。
おわりに
なかなか自分をほめるのは難しいものです。しかし、自分をほめて自信を持つことが行動変容につながります。あなたも、自分をほめる習慣をつけてみませんか?なお、EASEプログラムは全国の看護師が勉強しています。あなたの身近にいる看護師も実施できると思いますので、尋ねてみてください。