腎臓教室 Vol.40

第51回日本腎臓学会

去る5 月30 日~ 6 月1 日、福岡国際会議場において、第51回日本腎臓学会が開催されました。この学会には毎年全国の腎臓専門医が参加し、基礎的なことから最新情報まで幅広い発表が行われています。当協会理事長・松村満美子も6 月1日に行われた市民公開講座で発表と総合司会を務めました。

日本人のGFR推算式

数々の発表の中から、「日本人のGFR推算式」について今回はご紹介しましょう。
皆さんは「GFR」という言葉を聞いたことがありますか? GFRとは、「糸球体濾過量」といって、腎臓の働きの目安となるものです。
しかし、皆さんの一般的な検査結果をみても、「GFR」という項目はないですよね?GFRを正確に測る検査は時間もかかり、臨床現場で日常的に行うのは容易でないため、血清クレアチニン値、年齢、性別から、GFRを推算する式が研究されました。
従来はアメリカ人向けに作られた計算式に、日本人係数をかけて推算値を出していましたが、腎臓学会では「日本人のGFR推算式プロジェクト」を立ち上げ、1年かけて日本人の実情により合った独自の計算式を作成しました。
従来から腎機能の評価に広く使われている血清クレアチニン値は、年齢や性別による筋肉量の違いを考慮しないと、腎機能が正確に把握できないということが問題とされていました。 そこで、今回発表された新しいGFR推算式を利用することで、より簡便に腎機能を判断でき、腎臓病の早期発見・早期治療につながると考えられています。

さて、この新しい推算式を元にした推計では、日本全国で約1330万人の方が自覚症状のない慢性腎臓病(CKD)と考えられるということです。
これまでも「そらまめ通信」で何度かお伝えしましたが、CKD患者さんは脳卒中や心臓病など心血管系の病気のリスクも抱えています。
そこで、腎臓病の早期発見と適切な時期に適切な治療ができるよう、かかりつけ医・他の疾患の医師と腎臓専門医が連携していくことが、非常に大切になってきます。
そのためにもこの新しい推算式は、重要な役割を果たしていくと考えられています。
 「日本人のGFR推算式」の詳しい計算式は難しいのでここでは割愛しますが、下記のインターネットサイトで、血清クレアチニン値、年齢、性別から自動的に計算できますので、ぜひ一度自分の「推算GFR値」を確認してみてください。

●腎臓ネット https://www.jinzou.net/
●日本慢性腎臓病対策協議会 https://j-ka.or.jp/
●愛知県腎臓病連絡協議会 http://www.aijinkyo.com/

市民公開講座

6月1日(日)の市民公開講座「腎臓にかかわる健康のあり方」には、300名を超える市民が参加され、CKDに対する関心の高まりが感じられました。
第1部の基調講演では、大会の総会長・斉藤喬雄先生(福岡大学腎臓・膠原病内科教授)より「腎臓と健康」、当協会のサポーターでもある宮崎正信先生(宮崎内科医院院長)より「検尿でわかるあなたの動脈硬化-新たな国民病・慢性腎臓病-」、つづいて服部元史先生(東京女子医科大学腎臓小児科教授)より「学校検尿と小児腎疾患」、兼岡秀俊先生(福岡大学看護学科教授)より「腎臓を悪くしないための三度の食事の取り方、考え方」、松村満美子(当協会理事長)は「透析患者今昔」と題してお話するなど、さまざまな角度から幅広く腎臓と健康に関するお話がありました。
第2部のパネルディスカッションでは松村が司会を務め、会場の皆さんからの質問に、講師先生方のわかりやすい回答があり、福岡の皆様に腎臓や腎臓病についての理解を深めていただきました。

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