腎臓教室 Vol.39

血液検査からわかること

どうして採血するの?

慢性腎臓病では、病状の判定と病期の進行とともに現れる合併症の情報をつかむことが大切です。血液を検査すると、身体の状態の概要を評価できる情報が得られるのです。病気の状態が固定しているものであれば、一度採血すればすみますが、慢性腎臓病は進行します。治療の必要性を判断し、治療開始後は、その効果を判定し、軌道修正を行います。すなわち、病気の状態が変動するので、これを捉えるために、検査を定期的に行います。

何を調べるの?

●定期の通院で調べる一般的な血液検査の内容と意義について説明します。
  1. 栄養状態
    すべての病気で栄養状態を評価することは重要です。慢性腎臓病では、栄養障害を起こしやすいのです。三大栄養素のうち、炭水化物と脂肪はエネルギーになり、蛋白質は筋肉など身体を作る材料になります。ですから、総蛋白、アルブミンなどの蛋白質の値で栄養状態を評価しています。
  2. 慢性腎臓病の病期
    クレアチニン値から推算糸球体濾過率(eGFR)値を計算して、慢性腎臓病の程度と推移を調べます。新潟県では、クレアチニン・クリアランス(Ccr)値あるいはeGFR値が20mL/min未満になると、腎機能障害3級の身体障害者手帳と(県)障害者医療受給者証を申請することができます。これを取得する頃は、エリスロポエチン製剤や球形吸着炭など高価な医薬品が必要になる頃とほぼ一致しています。
  3. 合併症の発見下記の①~⑧に示す合併症が、腎不全の進行とともに現れます。ただし、すべてがいっせいに現れるわけではありません。
    1. 高窒素血症……尿毒素とは、体内で産生される物質のうち生体に有害な作用をもたらすさまざまなものを指します。これらは、クレアチニン、尿素窒素とほぼ平行して増えるので、血液中のクレアチニン値、尿素窒素値が尿毒素のたまり具合を推定する目安になります。これらの値が高い状態を高窒素血症といいます。尿素窒素値は、食事の蛋白からの代謝産物であり、筋肉から作られる老廃物であるクレアチニン値と異なり、食事の影響を受けます。尿素窒素/クレアチニン比は、通常、食事療法が適正であれば10以下です。出血性病変があれば尿素窒素値が高くなり、この比が10以上の高値を示し、貧血の進行と併せて、出血性病変を発見する手がかりとなります。
    2. 高カリウム血症……腎不全では、カリウムが尿から排泄されず、血中にカリウムが多くなります。カリウム値が異常に高くなると、心臓の動きが止まることもあります。カリウムは細胞内の主たる陽イオンです。生の果物、野菜、魚、肉などに多く含まれています。
    3. 高リン血症……糸球体濾過率が低下すると、リンの排泄量が低下して、血液中のリン値が高くなります。
    4. 低カルシウム血症……カルシウムを腸管から吸収するためには活性型ビタミンDが必要です。腎臓にはビタミンDを活性化する働きがあります。慢性腎不全では活性型ビタミンDの産生が障害されて、低カルシウム血症をきたします。
    5. 貧血…… ○腎性貧血/腎臓は赤血球を作るホルモンであるエリスロポエチンを産生しています。慢性腎不全ではエリスロポエチンが不足して腎性貧血になります。腎性貧血の管理のために、ヘモグロビン値を定期的に測定します。血中エリスロポエチン値を定期的に測ることはありません。 ○鉄欠乏性貧血/腎性貧血では、赤血球の材料である鉄が不足していることがあります。鉄、フェリチン、不飽和鉄結合能を測定して、体内の鉄の状態を判定します。
    6. 高尿酸血症……尿酸はプリン体という物質が肝臓で分解されてできています。体には必要のない老廃物です。腎臓から尿に混じって排泄されます。腎不全では排泄が低下するので、高尿酸血症をきたしやすいです。
    7. 代謝性アシドーシス……他の検査項目は静脈から採血しますが、代謝性アシドーシスは動脈から採血して調べます。また通院のたびに検査するものではありません。酸性物質は排泄経路から2つに分類されます。肺から気体で排泄される揮発性酸性物質と腎臓から液体として排泄される不揮発性酸性物質です。不揮発性酸性物質である尿毒素が貯まると代謝性アシドーシスをきたし、血液が酸性に傾きます。pH値とHCO3 値が低くなります。
    8. 肝機能……腎臓病患者さんは上記のような様々な合併症を抱えて、多くの薬を飲んでいます。肝臓から排泄される薬剤が肝臓の機能障害を起こしていないか、GOT値、GPT値、γ-GTP値、ALP値などを測って調べます。

●おわりに

血液検査には痛みを伴いますが、血液から多くの重要な情報が得られることが理解できたと思います。検査結果を日常生活に活かして、前向きに過ごしていただくことを願っております。

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