腎臓教室 Vol.35
食事療法を成功させるためのポイント(その1)
残っている腎機能を大事にするために、食事療法はとても大切な治療の一つです。今回と次回の2回にわけて、食事療法を成功させるためのポイントを 大野記念病院栄養科・管理栄養士の田村智子先生に紹介していただきました。
医療法人寿楽会 大野記念病院 栄養科
管理栄養士 田村 智子(たむら・さとこ)先生
腎臓病保存期の食事療法
腎臓病の食事療法は、(1)たんぱく質を控える、(2)エネルギーを確保する、(3)塩分を控える、の3点に加えて、状態によってはカリウム、リンを控えることです。たんぱく質摂取量をどのくらいにするかは、個々の患者さんの腎機能状態や標準体重により異なります。腎機能がかなり低下した場合は、たんぱく摂取量を標準体重あたり、1日0.7g/kg未満に抑える必要があります。できる限り、卵類、魚類や肉類、大豆製品など良質のたんぱく質を摂ることを心がけます。
エネルギー量は年齢、性別、活動量などにより標準体重あたり、27~39kcal/kgが基準になります。
食塩摂取量は血圧、むくみなどにより異なりますが、1日7g以下に控えるようにしましょう。状態によってはカリウム、リンの摂取量を制限することがあります。
指示栄養量は主治医が出します。食事療法は必ず、医師の診察を受け、管理栄養士の食事指導のもとで行うようにしましょう。
食品の計量は大変?…でも大切!
計量、記録、計算……やはり、そうなのか、めんどうだな、それが苦痛だから、食事療法がいやになるのだと思われる方が多いでしょう。しかし、目分量で行っていると低たんぱく質、減塩の正しい食事療法はできません。とくに主食のごはん、めん類、パン類や副食の魚類、肉類、大豆製品、卵類、牛乳、乳製品などのたんぱく質食品、それに食塩やしょうゆ、砂糖、味噌などの調味料を計量することは大切です。重量計、計量カップ、計量スプーンを使用して、正しく計量する習慣を身につけましょう。
重量計は1g単位で計量できるものが必要です。大まかな目盛りでは誤差が生じてきます。デジタルスケールは器ごとでも正味重量を計ることができて便利です。
食塩や砂糖、味噌の容器にそれぞれ計量スプーンをセットしておくと、いちいち計量スプーンを洗う手間が省け、少しでも楽に計量ができます。
記録は後々のための便利帳
食事内容を記録することで、不足、過剰になっている食材や調味料が把握でき、栄養価計算することで摂取栄養量の過不足が分かります(栄養価計算は「5訂増補日本食品標準成分表」や「腎臓病食品交換表第7版」で行います)。1日分を食べた後に計算するのではなく、できる限り、毎食前に実行してみてください。とくに夕食前に計算し、朝、昼、間食での摂取栄養量を把握し、夕食で過不足分を調節します。
1日3食でほぼ均等に調節するのが望ましいのですが、お付き合いがあったり、予定していた食材が購入できなかったりと、計画通りの献立にならないことがあります。それを夕食で調節すれば、たんぱく質や塩分が過剰にならず、エネルギーが不足することなく、正しい食事療法が実行されることになります。
食事記録を続けていき、1カ月分もすれば、同じ食材料、重量での栄養価計算が繰り返されるので、少し手間が省けるようになってくるでしょう。
朝、昼、夕の献立を入れ替える、食材の組み合わせを変えることで、バラエティに富んだ自分自身の献立集ができあがっていきます。
忙しいときや体調が思わしくないときなどで献立が立てられないときに、その記録を参考にすることができます。
※次回の「その(2)」では、特殊食品の利用法などをご紹介します。