腎臓教室 Vol.32

血液透析(HD)・腹膜透析(CAPD)・腎移植
腎不全治療の3つの選択肢の違いと特徴

慢性腎不全の末期になっていよいよ自分の腎臓の働きが落ちたら、 透析か移植が必要となります。施設へ通って週3回治療を行う血液透析(HD)と、自宅で自分の腹膜を使う腹膜透析(CAPD)と腎移植があることはご存知と思いますが、3つの各々の特徴など、2003年2月に紹介したものを再度ご紹介します。

過日行ったアンケート調査の自由記述欄で、多くの方から3つの治療法の比較を知りたいとのご要望を受けて、太田和夫先生のご了解のもと、時間も経っていますので再録しました。

  HD CAPD 腎移植
特徴は?
体外で装置を用いて血液をきれいにする お腹に液を出し入れして血液をきれいにする 正常に機能する提供者の腎臓を外科手術によって移植する。腎移植には2種類ある
・生体腎移植
家族から2つの腎臓のうち1つをもらう
・献腎移植
亡くなった人の腎臓を提供してもらう

移植に先立ち、多くの検査が必要
透析場所 透析施設 自宅や職場など、どこでも
操作をする人 病院スタッフ あなた自身または家族
通院回数 週3回 月1~2回
透析時間 1回当たり4~5時間(週約12時間) 連続的に毎日4~5回バッグを交換
事前に行うアクセス手術 シャント造設術 カテーテル挿入術
透析時の痛み あり(穿刺時) なし
教育期間 0~4週間 2~3週間
 
体調は? 短時間で透析するため直後はだるい 毎日連続的に透析するためラク 生着すれば透析などのすべての時間的制約から解放される、ただし、免疫抑制剤は一生飲み続ける必要がある。
水分・老廃物の体内移動 大きい 小さい
心・血管系への影響 大きい 小さい
尿量の維持 導入後、急速に減少する 比較的長く継続される
注意すること シャント部の感染 カテーテル周囲や腹腔内の感染
 
食事は? 制限が多い 尿量があれば制限が少ない 制限が少ない
水分 制限あり 制限あり 制限なし
塩分 制限あり 制限あり 制限なし
カリウム(野菜、果物など) 制限あり 制限が少ない 制限なし
リン 制限あり 制限あり 制限なし
糖(ごはん、麺類など) 適切な量をとる 制限あり 適切な量をとる
たんぱく質(肉類、豆腐など) やや少なめにとる やや多めにとる。低栄養に注意!(1日6~8g失う) 適切な量をとる
 
日常生活は? 制限が多い 制限が少ない 制限なし
透析中の活動性 透析中は拘束される バック交換時以外は自由行動 制限なし
旅行・レジャー 透析施設がないところでは困難 制限が少ない 可能
スポーツ 可能 過激なものは避ける 可能
入浴 透析日は避ける 若干不便だが湯船にも入れる 可能
自己管理 日常的に重要 日常的に重要 日常的に重要
社会復帰 不利(時間的な拘束が多い) 有利(生活リズムに合わせた透析が可能) 有利(日常生活の拘束時間がほとんどない)
 
その他 在宅透析という方法もある 機会を用い、夜間治療するAPD療法もある 血液型が異なっても移植できるようになった

移植を希望しても、献腎が少ないため、死体腎移植はなかなか望めない
治療の継続期間 シャントにも寿命がある(低血圧によるシャント閉塞など) 長期例では腹膜機能が低下することもある(被嚢性腹膜硬化症など)
アクセスの交換 人工血管を移植したり、カテーテルを挿入することもある カテーテルを交換することもある

HDでも、今号でご紹介している芳野さんのように、家庭で行う在宅透析も少しずつ増えてきています。またCAPDでも、夜寝ている間だけ行うAPDを選択する方も増えてきました。
またCAPDとHDの併用(保険の点数の関係で今はかなり難しい)も出てきています。

どの治療法を選択するか、ご自分の性格、仕事や家庭環境、体質などを考慮して、主治医とよく相談して、自分にもっともふさわしい治療法を選んでください。

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