腎臓教室 Vol.28
第51回(社)日本透析医学会学術集会・総会を終えて
さる平成18年6月23日(金)から25日(日)までの3日間、パシフィコ横浜を中心に、第51回(社)日本透析医学会学術集会が開催され、約1万5千人の方々が参加されました。今回はこの学術集会の模様を、斎藤 明先生にご報告いただきました。
斎藤 明(さいとう・あきら)先生
第51回(社)日本透析医学会学術集会・総会 会長
1.学会とその趣旨
今回の学術集会のスローガンは、“新たなる発見、そして普及を”でした。これは、2年前から日本透析医学会の理事長でもありました私が、“真に患者さまと社会に対して学術・研究を通して貢献できる学会にする”ことを目標に取り組んできた活動の集大成になっています。そして学術委員会の中に新たに「新科学技術開発・活用小委員会」と「治療ガイドライン作成小委員会」を設立し、遺伝子治療、再生医療、マイクロエンジニアリングなどの新しい科学を透析医学や患者さまの合併症治療の中に積極的に取り入れること、また、臨床的にエビデンス(事実)と確認され、経験が蓄積された治療法は積極的に治療ガイドラインとして確立し、広く普及させることを目指してきたことをこのスローガンに表したものでもあります。2.スローガンを実現させるために
新科学技術開発・活用小委員会には、他の科学領域の専門家、例えば名古屋大学大学院工学研究科マイクロ・ナノシステム工学専攻 生田幸士教授、再生医療分野の大阪大学 今井圓裕教授、国立循環器病センター研究所生体工学科研究室 古薗 勉室長などの研究者により構成され、新たな人工腎臓の開発・研究が活発に検討されています。また、日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本循環器病学会などと合同委員会がもたれ、共通する病態の解明や治療ガイドラインの合同作成などが行なわれてきました。本学術集会では、それらの取り組みをワークショップ、パネルディスカッションなどで他学会と共催し、日常の活動の結果を報告しています。また、透析ケアをチームとして行うべく、腎不全看護学会、臨床工学技士会、透析ソーシャルワーク研究会などと共催で、透析患者さんの食事・栄養、介護、インフォームド・コンセント、透析液水質などに関するワークショップ、パネルディスカッションなども行なわれました。さらに、約2430題の一般演題が採択され、そのうち約530題が口演、約1900題がポスター発表されました。口演の前には、座長によるその領域における治療や研究がどのように進み、現在どのような問題を解決する必要に迫られているかのレビューが行なわれ、その後個々の口演が発表されました。ポスター発表では、優れた演題にはゴールデンリボン賞が授与されました。いずれの会場でも活発な討論が行なわれ、有意義な意見の交換ができたとの評判でした。
若い医師、看護師、臨床工学技師、栄養士、ソーシャルワーカーなどに分かりやすく腎臓病や透析のことを学んでいただくために、3日間にわたり2会場で「分かりやすい腎臓病・透析教室」が開催され、大勢の方々が参加されました。そこには、医学生、看護学生、臨床工学生などが無料で参加でき、聴講した後に感想をアンケート用紙に記載していただき、これからのために活用するといった取り組みも行なわれました。
3.多くの催しと展示、そして横浜紹介
透析やケアに関連する多くの(100以上の)企業、団体の展示ブースが設けられ、新しい医療器材が紹介されました。また、全国の透析食を配給する施設、会社が紹介され、3社の透析食1日各250食が試食されました。“意外に美味しい”という意見が回収されたアンケートに見受けられ、患者さんに温かくて美味しい透析食が紹介されるきっかけとなるのではないかと思われました。また、提示会場内にはジャズ、アイスクリーム、ガス灯など日本で横浜に初めて登場したものと横浜内の発祥地が紹介されるコーナーが設けられ、横浜をよく知っていただくための企画も盛込まれました。レセプションとなった横浜美術館の夕べ、赤レンガ倉庫におけるセミナー、そして中華街における「薬膳のお話と試食セミナー」なども広く横浜を知っていただく企画の一部でした。多くの方々に楽しんでいただけたと思います。
これらの取り組みの成果はきっと今後の透析患者さまの治療につながるものと確信いたしております。