腎臓教室 Vol.27
のう胞腎について
「のう胞腎」という病気をご存知でしょうか。場合によっては、透析が必要となる病気です。今回は、この「のう胞腎」について、虎の門病院の乳原善文先生に解説していただきました。
乳原善文(うばら・よしふみ)先生
虎の門病院腎センター内科
1985年大阪市立大学医学部卒業後より一環して虎の門病院にて腎臓臨床を続ける。1996年動脈塞栓術をのう胞腎患者の治療に応用して以来、国の内外を問わず、多くののう胞腎患者が訪れその治療にあたり、その数は10年で約1000人にも及んでいる。
のう胞腎とは
のう胞腎として知られている病気は、両側の腎臓に多数ののう胞がみられる遺伝性の病気で、親がこの病気である場合に子供はほぼ50%の確率で同じ病気に罹る可能性があります。のう胞とは
のう胞には水が溜まっており、主に腎臓と肝臓にみられます。よくのう胞はおしっこの溜まりであると説明されてきましたが、必ずしもそうではなく、実際にはまだその成因は明らかではありません。のう胞に溜まっている液の多くはとてもきれいな真水に似ていますが、そこに細菌の感染や出血がみられると様々な色が付いてきます。皆が透析になるのか
この病気をもつ患者の何%が透析になるかはわかっていません。しかしのう胞腎のために透析になった患者の透析開始年齢の平均は59歳前後です。遺伝子病ではありますが、同じ遺伝子を受け継ぐ肉親がまったく同じ運命を辿るわけではありません。兄弟同士でも透析を開始する年齢は様々であり、透析に入らずに一生を全うする人もいれば、親より子供の方が早く透析に入ってしまう場合もあります。どんな症状がみられるか
のう胞があるからといって症状があるわけではありません。しかしのう胞の中に細菌の感染や出血がみられると痛みや発熱がみられ、このような症状を契機にこの病気が見つかることもあります。大きな腎臓に対する治療は
これまでは、腎臓が大きくなり透析が必要になる頃に大きな腎臓を手術でとりだすことが行われてきましたが、おなかを切らずに腎臓を小さくする方法はないかと著者らは考えた末、足の付け根より針を刺し、そこからカテーテルを挿入して腎臓にいっている血管を詰めることで腎臓を小さくする治療法を考え出しました。この病気は増えているのか
透析に入る頃になると、のう胞腎患者の多くはおなかの出っ張った不格好な体型になり、中にはその体型の故にすれ違ったあと振り向かれてじろじろとみられ嫌な思いを経験する人もいる程です。この体型から想像するととても異性にはもてないだろうし、子孫は減ってゆくであろうと想像するのに難くありません。他の遺伝子病の多くは、患者数が年々減っているのに対し、この病気をもつ患者の数は増えており、この病気が原因で透析になる患者数も増加の一途を辿っています。