腎臓教室 Vol.26
透析療法について
慢性腎不全と診断されて、食事療法や薬で保存期を少しでも長くと願っていても、いつかは何らかの透析療法を選択しなければなりません。改めて自分にはどの治療法が合っているのかを考えるためにも、虎の門病院の原茂子先生に解説していただきました。
原 茂子(はら・しげこ)先生
虎の門病院腎センター健康管理部長
当協会理事
腎移植と透析療法
腎臓はおもに体の老廃物を排泄する臓器ですが、腎機能が非常に低下して末期腎不全といわれる状態になります。そのための治療法には大きく2つあります。透析療法(血液透析、腹膜透析)と腎移植です。腎移植に関しては、わが国では腎臓の提供者が少ないためにいまだなかなか普及しないことから、透析療法による治療が大部分をしめています。
透析療法には 1)血液透析療法 2)CAPD(持続携行式腹膜透析療法)の2種類があります。それらについてもう少しくわしく説明しましょう。
血液透析療法とは、腕の部分に作ったシャント部の血管(動脈と静脈をつないで、静脈に動脈血が直接流れるようにした血管)に刺した針から血液を体外に取り出し、ダイアライザーの中を流して、また血液を体にもどします。その間に体にたまった老廃物や水分を取り除き、体液の異常を是正します。一般的には週3回行い、1回4~5時間施行します。HDと略して呼ばれています。
HDF
HDの応用として、血液濾過透析があります。血液濾過透析(HDFと略して呼ばれています)は血液透析とどうちがうのでしょうか?HDFは、大量の補液を回路から注入しながら、HDを行うとともに、注入した分の水分も除去する方法です。透析中に血圧が低下してHDの継続が困難な場合や、透析アミロイドーシスなどの合併症のある場合にHDFを行います。透析アミロイドーシスの原因となるB2ミクログロブリンなどのやや大きな分子量の物質を取り除きます。水分を取り除く能力が高く、分子量のやや大きな物質も取り除ける能力のあるダイアライザーを使用します。アミロイドーシスの発症を抑制するなどの利点がありますが、大量の補液(5~10L)を必要としますので、コストが高くなります。また、HDFを行う際に、体外に取り出す血液量が十分に確保できないと、治療時間が長くなります。
CAPD
次にCAPDについてお話しましょう。CAPDは自分のおなかの中の腹膜を透析膜として利用する透析方法です。おなかのなかに腹膜透析のための液を注入し、6時間貯液しておきます。注入した液のなかに、腹膜を介して水分や老廃物が出てきた後、おなかに入っている液を体外に排泄します。通常、1日に4回液に出し入れを行います。透析液の出し入れをするために、カテーテルの先端はおなかのなかにあり、もう一端は、おなかの外にあります。この治療は24時間持続して行う治療法ですが、血液透析とは異なって、機械につながれることがないために、透析中も自由に動けます。持続携行式腹膜透析(CAPD)と呼称されています。就寝中のみに施行する方法もあります。自宅でできる治療法ですから、充実した社会復帰が可能です。また血液を体外に取り出す必要がないこと、24時間かけてゆっくりと、持続して透析が行われるために、心臓の合併症などでHDが困難な方や高齢者の方には、適切な透析方法です。CAPDが適切に行われているかどうかなどのチェックのために2週に1回あるいは、月1回の来院が必要です。液の交換や、おなかから外に出ているカテーテル部分を清潔にしておくことなど、自分でのケアが必要ですから、実施できるようになるための訓練をうけることが必要です。透析方法の選択に際しては、HD、CAPD、それぞれに長所、短所があります。合併症の有無、会社復帰の目的などに関して、主治医からの説明を受けられ、よりより質の高い、また充実した生活のための透析ライフを計画してください。