腎臓教室 Vol.14

「腎移植について」

現在の医療では、一度ダメになった腎臓の細胞を再生させることはできません。透析から離脱できる唯一の治療法、それが腎移植です。腎移植には、大きく分けて「献腎移植」と「生体腎移植」がありますが、今回はそれぞれの方法や費用、移植後の生活などについてみてみましょう。
監修:太田医学研究所所長 太田和夫先生
参照:臓器移植ファクトブック2003

移植の種類

献腎移植

献腎移植とは、心臓死もしくは脳死で亡くなった方から腎臓の提供を受けて行う腎移植です。献腎移植を受けるには、あらかじめ「臓器移植ネットワーク」に登録しておくことが必要になります。

臓器移植ネットワークに登録したい場合、まず透析病院の主治医に相談します。主治医を通じてお住まいの地域にある移植施設病院を紹介され、そこで登録と血液などの検査が行われます。費用は最初の登録料3万円、その後は年間更新料として5千円かかります。実際に献腎移植を受けられるのは、現在のところ透析者に限られています。

生体腎移植生体腎移植とは、ご家族や血縁者から、2つある腎臓のうちの1つを提供してもらって行う腎移植です。腎臓はとても働き者なので、残っている腎臓が癌などにならなければ、腎臓が1つになってもあまり大きな問題はありません。

血液型が違っても大丈夫?

輸血できない組み合わせ(血液型不適合)であっても、今では抗体除去などの処理をすることによって移植することが可能です。また腎移植を受けるためには、6つあるHLA(白血球の型)の適合数なども検査します。このHLAは親子・兄弟間であっても完全には一致しない場合が多いのですが、適合数が多いほど「相性の良い」腎臓だといえます。その他に既住症やウイルスの有無なども検査します。

腎移植の現状国内で移植手術を受ける場合、入退院、手術、検査、投薬などの費用として約400万円の医療費がかかりますが、保険適用になるため自己負担は大幅に軽減されています。公費負担については、自治体によって手続きが異なります。海外で手術を受ける場合には実費になり、各国の状況によって費用も大きく異なります。

移植後の生活

移植した腎臓がうまく機能すれば、透析の必要がなくなり、食生活もほとんど健常者と同じです。

腎臓では尿の他、ホルモン類も作られますので、貧血が改善されたり、とくに子どもにとっては成長が促進されます。

しかし、人からもらった大切な腎臓は、そのままでは体の免疫機能の作用で「異物扱い」されてしまうので、新しく植えた腎臓を長持ちさせるために「免疫抑制剤」を飲みつづける必要があります。

なお、透析から離脱しても、免疫抑制剤の服用は欠かせないので、障害者1級の資格は基本的に変わりませんが、障害者年金の受給額が変化する場合があります。

腎移植の現状

日本での腎移植は生体腎移植がほとんどです。2002年では腎移植総数755件のうち、生体腎移植633件、献腎移植122件(心停止下献腎112件、脳死献腎10件)でした。

約23万人の透析者のうち、2002年末の移植待機登録患者数が1万2974人ですから、献腎移植の希望がかなうのはとても厳しい状況です。

これら腎移植の件数が伸び悩んでいる原因の1つに、腎臓提供者の減少があります。1997年に臓器移植法が施行されて、従来の心停止下での臓器提供に加えて脳死での提供も可能になりましたが、マスコミ報道の加熱と同時に多くの誤解や勘違いも多発し、1979年から行なわれていた心停止下での臓器提供件数までもが減少してしまいました。

移植医療は提供する側も、提供される側も、正しい知識をもって、先入観や風評などに惑わされないことが大切なのです。

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