治療の考え方
急性期や早期でなく、既に慢性化してしまった腎臓病では、病気そのものを治すことは難しく、完治は期待できません。しかし病気の進行を抑え、症状を改善できれば、健やかで快適な生活を続けることも可能です。食事療法や薬物療法によって腎臓をいたわり、残された腎機能をなるべく長持ちさせることが治療の基本です。
腎機能の低下した原因が明らかな場合、その原因となっている病気を治していくことから治療が始まります。たとえば糖尿病性腎症では、食事療法によって血糖をコントロールし、網膜症や神経症など合併症のケアを十分に行わなければなりません。腎硬化症では、その悪化因子となる高血圧や動脈硬化を薬や食事、禁煙などで改善していくことが大切です。
腎不全が高度になると、腎機能を補う透析や腎臓移植が必要になってきます。これは腎機能が正常の10%以下、血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上が目安になります。腹膜透析(PD)や血液透析(HD)などによって老廃物や毒素を排泄することはできますが、赤血球をつくるホルモンや血圧を調節するホルモンの分泌・調節などの機能は代替できません。このため薬物療法を調整し、透析療法の特性を踏まえた食事管理を継続していくことが必要です。
慢性の腎臓病では、食事や日常生活の管理がとても重要なため、患者さん自身が治療としっかり向き合わなければなりません。日常生活では、ことさら大仰に意気込んだり、一人で問題を抱え込むことは決して長続きせず、禁物です。
患者さんやご家族を中心に、主治医、看護師、栄養士、検査技師などと連携しあうことが大切です。ともに病気に立ち向かうチームの一員として、一人で悩まず、医療スタッフと相談し治療を受けることで、無理なく病気とつきあえるはずです。