一般的な検査
腎臓に関する検査のうち最も基本的な検査は尿検査と血液検査です。
尿検査
尿たんぱく定性検査 尿潜血定性検査 尿糖定性検査
健康診断などで「検尿」として行われている検査で、尿にたんぱく質や赤血球が含まれているかを調べます。腎臓病かどうかの手がかりを得るための、最も簡単な検査です。異常がある場合は尿たんぱくあるいは潜血プラス(+)、異常がなければマイナス(-)と表記されます。
通常、血液中のたんぱく質は腎臓の糸球体と呼ばれる部分で、ある程度尿の中にこし出され(ろ過され)ますが、尿細管という部位で再度吸収されて血液中に戻るため、尿中に排泄される量はごくわずかです。また、赤血球も健康な人でも尿中に排泄されますが、ごく少量であるため定性検査ではマイナスが正常値です。
このたんぱく質や赤血球が尿中に大量に含まれていて定性検査で陽性(+)となる場合は、糸球体や尿細管に障害がある可能性があります。
尿たんぱくの定性検査(プラスやマイナスのみの判定検査)で異常が認められた場合には、尿たんぱくの定量検査を行って、実際にどのくらいの量なのかをきちんと測定します。
その他尿糖の有無なども、尿定性検査から知ることができます。
尿沈査(にょうちんさ)
尿を遠心分離器にかけて、沈殿した固形成分を顕微鏡で調べる検査です。固形成分には赤血球や白血球、結晶成分などが含まれます。これらを調べることで腎臓病の種類を知ることができます。
尿糖定性検査
慢性腎臓病CKDの原因として糖尿病が最も多くなっています。従って、CKDを予防するには糖尿病の有無を早期に判断する必要があります。一番簡単な検査は尿糖検査です。尿の中にテープをつけるだけで尿に糖が出ているかわかります(正常な人は尿に糖は出ません)。尿糖がプラスになった時には血糖検査や75gブドウ糖負荷試験などを行い、糖尿病があるかどうか確認します。血液検査
クレアチニン(Cr)
クレアチニンは筋肉内で、アミノ酸の一種であるクレアチンがエネルギーを放出する時に作られる代謝産物です。健康であれば、血液中のクレアチニンは腎臓の糸球体でろ過され、尿細管ではほとんど再吸収されずに尿中に排出されます。腎臓の機能が障害されていると、尿中に排泄される量が減少し、結果として血液中に溜まります。クレアチニン値は、腎臓の機能の低下とともに値が高くなってきます。基準値は、だいたい男性で0.6~1.1mg/dl*、女性で0.4~0.7mg/dl**です。患者さんの症状などによって異なりますが、血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上となると透析導入が検討されます。*、** 出典:株式会社日本医学出版「最新の透析室検査 診療ガイドラインに基づく2008→2009」
発行2008年6月1日初版第1刷発行、編著 丹羽利充
尿素窒素(BUN)
尿素窒素は、血液中の尿素に含まれる窒素成分で、たんぱく質が利用された後にできる老廃物です。本来はクレアチニンと同様、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されますが、腎機能が低下するとろ過しきれずに血液中に溜まるため、血液中の尿素窒素の値が高くなります。正常値はだいたい8~20 mg/dlです。
尿素窒素は、たんぱく質の摂り過ぎ、消化管からの出血、脱水、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などでも数値が上昇します。逆にたんぱく質の摂取不足や肝不全では数値が低くなります。
eGFR(推算糸球体ろ過量)
クレアチニン値は腎機能を知る上でとても重要な検査値ですが、短所もあります。筋肉の老廃物であるクレアチニン値は、個人の筋肉量に左右されます。腎機能が同じであっても男性よりも女性、若年者よりも高齢者の方が低値となる傾向があります。また、クレアチニンは腎機能(糸球体ろ過量)が50%以下に低下するまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適していません。そのため、腎臓の機能を正確に知る必要がある場合にはクレアチニン・クリアランス(後述)という検査を行って糸球体機能を測定します。最近ではより簡単に腎機能が求められるよう、クレアチニン値と年齢、性別という三つの要素をかけあわせたeGFR(推算糸球体ろ過量)が幅広く用いられるようになりました。
GFRはGlomerular Filtration Rate(糸球体ろ過量)の略称で、腎臓の中にある糸球体がどれくらいの老廃物をろ過することができるかを示す値です。「ml/分」という単位ですが、おおよそ腎機能のパーセンテージに対応しており、GFRが75ml/分であれば、腎機能が健康時の75%程度と考えることができます。