患者さんのためのコミュニケーション講座 – 腎臓サポート協会

患者さんのためのコミュニケーション講座

【第1回】 あなたがいのちの主人公・からだの責任者

事務局長 山口育子さん

お話 NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML 事務局長 山口育子さん

 初めまして。COMLの山口です。今回から6回シリーズで、医師や看護師などの医療者と、どのようにコミュニケーションをとっていけばよいのか、ご一緒に考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 COMLでは、一般市民の方に向けて「医者にかかる10箇条」という小冊子を作成しています。第3回以降はそれに沿ってお話していきますが、1回目の今回は、基本にしたい考え方、「あなたがいのちの主人公・からだの責任者」について、ご紹介したいと思います。

“おまかせ医療”から“納得の医療へ”

 病気は誰にも代わってもらえないものです。けれども病気によっては、人生を左右する大きな問題にもなります。一度しかない大切な大切なご自分の人生について自分自身できちんと受け止めて、考えていただきたい…、これが「あなたがいのちの主人公・からだの責任者」という言葉に込められた願いです。
 たとえば、車を買おうと思ったら、何の予備知識も持たず、営業マンの勧めるままに買う人は、まずいないことでしょう。パンフレットを集め、友人・知人からも情報を得て懐具合も考えた上で、多くの選択肢から自分の希望にあったほしい車を絞り込んでいきますよね。医療もこれと同じなのです。
 “おまかせ医療”という言葉があります。一昔前までは、治療の選択肢も少なかったので、それでもよかったかもしれません。でも、いまは状況が違ってきています。医療の進歩は長寿社会をつくり、それにともない長年つきあっていかなければならない慢性疾患が多くなってきました。糖尿病や、腎臓病もそのような慢性疾患です。医療の進歩によって様々な治療法や薬が開発され、患者さんの選択肢も日々増えています。腎不全の治療方法だけでも、腹膜透析・血液透析・移植と3種類あり、患者さん一人ひとりの病気の状態はもちろんですが、価値観や生活スタイルによっても、選択は変わってきます。これは、言い換えると、「患者さん本人でなければ、最適な治療法を選ぶことは難しい」ということになります。

大切なのは患者と医療者の“協働”

 仕事や趣味など、患者さんが大事にしていることや家族の状況など、一番よくわかっているのは患者さんご本人です。「おまかせします」と言われても、医師はその患者さんの日常生活や価値観まで、すべてを知り尽くすことは不可能ですね。長期にわたる治療が必要な場合、良い状態で治療を継続するためにも、医療者側と患者さん側の“協働”が大切になってきます。“協働”とは、「互いに足りないところを補い合う関係性」を指します。医療者だけががんばっても治療は成立しない時代になってきています。医療者ができることと患者さんができること、お互いが各々力を合わせてこそ、最大の治療効果を発揮できるのです。
 胆石の治療を例にとってみますと、①外来で衝撃波治療 ②薬で溶かす ③腹腔鏡を使った手術 ④開腹手術 と4種類くらいの治療方法があり、どの治療を選ぶか考えなくてはなりません。「薬で溶かすことは難しいです」と、専門医からの意見があり、②は外されました。さて、「私は手術は嫌。多少通院日数が多くなっても衝撃波で粉砕してもらいたい」という患者さん、「私は仕事が忙しいから、何度も病院に通いたくない。一度で済む手術にしたい。しかも入院日数が短くて傷口も小さい腹腔鏡で」という患者さん、「手術をする医師の視野が広くとれる開腹手術が、私にとっては安心できる」と考えた患者さんもいらっしゃいました。治療方法の選択は患者さんによって様々に異なり、患者さんによって「納得できる医療」は変わってきます。後悔しないためにも、患者さんご自身が病気を理解し、それぞれの治療方法の長所と短所を十分に理解して、ご自分の希望と照らし合わせて決めていくことが大切なのです。

決して一人で悩まない

 このようにお話すると、「何の知識もない私に選べるかしら? 」「私には無理」「トシだから、自分で考えて決めるなんてできない」と思ってしまう方がいらっしゃるかもしれません。でも、病気は誰かに代わってもらうわけにいきません。医師や看護師に協力してもらいながら、自分で決めることが大切なのです。
 自分自身で考えると言っても、「一人で考えて決めてください」ということではありません。“一人で悩まない”ということも大きなポイントです。一人で悩んでしまうとがんじがらめになって、身動きが取れなくなってしまいます。
 病気の状態やわかりにくい専門用語は、遠慮せずにプロである医療者に質問をしましょう。もちろん、ご自分の日常生活や考え方は、きちんと伝えることで、適確なアドバイスを受けることができます。最近では、本やインターネットで調べても、情報を得ることができます。また、自分の思いや考えを聞いてもらうなど、家族や友人の協力も必要です。COMLのような相談機関も大いに利用してください。
 このように情報収集しながらご自分の考えや希望を整理していきます。そして、あなたにとってベストな選択をして、ぜひ納得のいく医療を受けていただきたいと思います。

 次回は、今回お話したことを実現させていくための第一歩、「コミュニケーションの基本とは?」についてお話します。

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